≪各作品について≫
◎『怪談! まんじゅう怖い』◎
観客の中には、「観るの3回目です。」という方も居ました。おそれいります。
数回観ている方は、どんな感想を持ったでしょうか?
ある意味で一座を象徴する、この作品。
大真面目で、ふざけていて、どこかちょっと切ない。
役者と空気が全てです。
あ、ナスもいるか。(笑)
ローテクの精霊馬がそろそろガタがきているので、
2代目(2台目?)にしないといけないかも知れませんね。
あれ、紙製なので。(笑)
◎『道具屋』◎
とにかく菊池美里さんがすごかった。
与太郎が、あんな風に愛すべきキャラクターになるとは、いやはや、ビックリです。
三沼さん演じる叔母さんとのシーンは、ほのぼのとして可笑しく、中継ぎにピッタリでした。
≪菊池美里VS危村武志≫が上演できたのも、すごい事です。これ、本当に貴重。
こんな面白いやりとり、滅多に観られませんよ。
あのシーンは、毎回、袖で笑い転げていました。
三沼さんは、道具屋の女神で、会場を掌握してしまいましたね。(笑)
三沼さんと『夜明けのスキャット』は、長い間温めて来た組み合わせだったので、実現できて嬉しいです。
♪ル~ル~ルルル~♪
今までと違い、落語の噺をベースとしてかなり残した作品でしたが、
落語好きの方からも好評をいただけたのは嬉しかったです。
「サゲをもうちょっと・・・」という意見もありましたが、中継ぎとしては、あのくらいでよかったかと。
◎『キツネの嫁入り』◎
今までの一座の作品と違い、完全なオリジナル脚本でした
(『まんじゅう怖い』もオリジナルではあるが、メインでは初)。
いやあ、いい話になりました!
出演者・スタッフからアイデアをいっぱいいただきました。ぺこぺこ。
恩師から「山本周五郎の小説を彷彿とさせる」と感想をいただいて、叫びだしたい気持ちです。
ひょー!
今回の公演のポイントだったと思いますが、
出演者のバランスが大変に良かった。
スポーツでもそうですが、チームプレイって、バランスなんですよね。
中心にタカオさん・流騎亜さん・奈津美さんの三人が居て、
外枠に三沼さん・危村さんの年長組。
その間に、私と菊池さんが位置する。
関係性がハッキリとしていて、観る側も解りやすい。
さらに、年齢にバラつきがあると、芝居全体の幅が広がるのです。
そういう意味でも、三沼さんの存在って重要。
危村さんは、本当に芸達者な役者さんで、
その方が、大外に居てくれると、安定感(安心感)が全然違います。
キーパーやスイーパーのような存在ですね。
≪新吉・菊花・お恵≫
メインが3人。
以前にも書きましたが『偶数より、奇数の関係性』
私にとって、これは重要なのです。
そして、今回も俗に言う『恋愛モノ』にしない事を心がけました。
主役は、新吉であり、菊花であり、お恵です。
これが、全員人間だったら、もっとゴチャゴチャしたお話になったかも知れません。
ポイントは、菊花がキツネだというところです。
菊花というキャラクターは、非常に正直で素直で、嘘がない。
人間では無い存在だからこそ、説得力のある言葉というものが、やはりあります。
矛盾しているかもしれませんが、人間の言葉は、人間が言うと嘘臭くなってしまう時があるのです。
だからこそ、わたしの書く脚本は沈黙や間が多いのかも知れませんね。
≪菅野貴夫と新吉≫
タカオさんが演じる新吉は、無骨で不器用で繊細。
大変に真面目。だからこそ、苦しんでいる。
そこに、ドタバタとキツネの一家が入り込んで来て、あれよあれよという間に自分のペースは乱され・・・
可哀想ですが、笑えます☆ それが大事。
この役者さんは、二の線と三の線を自在に行き来できるのが素敵。
それこそ、舞台上で素直なのでしょうね。きっちり受けて、きっちり返す。
最後のジンギスカンダンスは、貴重ですねえ。他じゃ多分観られない。(笑)
≪綾小路☆流騎亜という存在≫
今回、最年少であった、菊花役の流騎亜さん。
他の出演者に比べて舞台経験は少ないのですが、その分、柔軟で、真摯でした。
菊花というキャラクターは、彼女の持つ、一途さから生まれています。
本人は「私、こういうキャラじゃないですよー。」と言っていました。
そう、普通はそう見える。でも違うんだなあ。
≪お恵・堀奈津美≫
「喋らない堀奈津美」。よかったですよね!!
お恵は台詞がほとんど無いのですが、書き進める毎に、どんどん重要なキャラになってきて、
正直「どーすんべ・・・」と思っていたのですが、いらぬ心配でしたね。
結果的に菊花との対比が非常にいいアクセントになっていました。
三人は、稽古中にディスカッションの時間を多く取っていて、
それが各キャラの繋がりを、より強めていったと思います。
新吉=菊花=お恵
は、お互いに誰が欠けてもダメなのです。その関係性を創りたかった。
最後に菊花は去ってしまいましたが、消えてはいないのです。
≪たま・徳兵衛 おはつ・政五郎≫
メイン3人を見守り、時にはいじる、マイペースな大人たち。(笑)
ですが、そこには彼らなりの温かさがあり、それ無くしては、このお話は成立しません。
人情家のおはつにだって、きっといろんな過去があるでしょう。
いつもお茶を飲んでる政五郎さんは、どんな人生を歩んできたでしょうか。
人間を毛嫌いしている徳兵衛とたまが、なぜ新吉には興味を持ったのか。
「そこまで人間に優しくはございません」という徳兵衛の台詞は、とても大事。
だからこそ、新吉は自分で決断しなければならなかった。
あのシーンの台詞は、何度も何度も書き直しました。
人それぞれに事情がある。
ですが、私は全部語るよりは、観る側に委ねたいと思っています。
創り手の意図を、観客はあっという間に飛び越えてしまいますので。
≪3部構成について≫
前回から引き続き、3部構成というカタチをとりましたが、
各演目で、それぞれの能力を生かす事ができたのは、非常に良かったです。
『道具屋』の与太郎が、菊池さんの演じるたまを、より馴染みやすくしていたり、
一座の「観かた」を前半で伝えて、メインの後半に繋げる番組構成は、効果的であったと思います。
ただ、その分、脚本作成や演目の決定などは、本来、企画段階で確定しているべきで、
出演者の持ち味を活かすように脚本を書くなら、長いスパンで稽古を重ねなければならないでしょう。
今後の大きな課題です。
≪『菊花の契り』≫
雨月物語の一遍です。
菊花という名前は、ここから取っています。
私の場合、登場人物の名前が決まると、物語がするすると動き出す事が多いです。
「菊花」って、いい響きだよなあ。
(ちなみに、最後まで名前が決まらなかったのが新吉です)
公演時期が菊の節句だったので、物語にからめるか悩みましたが、どうしても説明的になってしまうので・・・
『菊花の契り』は、命尽きても、幽霊となって約束を果たす義兄弟の物語です。
逆に『キツネの嫁入り』は、約束を果たせなかった(守れなかった)者たちのお話だった訳ですが、
やはり、一座の作品は「欠けている人々」が中心となるようです。
さてさて、毎度ながら、えらく長くなってしまいました。
とにかく、今回の作品はお気に入りになったということです。
皆様、本当にありがとうございました!!
最後まで読んでくださった方、どうもありがとうございます。
小櫃川 桃郎太(おびつがわ ももろうた)