各作品の総括です。2回に分けます。
【NUMB】
作・演出 岩☆ロック
とにかく、岩☆ロックさんの無駄の無い脚本センスに脱帽。
キッチリと20分に収め、そのうえで台本に作者の想いを詰め込む手法には、舌を巻いた。
特出すべきは、最後に叫ばれる詩である。
これによって、物語は一気に集約し、加速度を増していく。
台本だけ読めば、けっこうしんみりとしてしまう部分だが、
そこをあえて叫びにするところに、岩☆ロック座の持ち味がうかがえる。
作品全体も、やり方によっては、かなりしんみりと感動的になっておかしくない内容である。
稽古当初からロック氏は「とにかくエネルギーを落とさないで、リズムを大事にしてください。」
という事を言っていた。
演者の発する熱量によって、物語のギヤを回転させていく手法である。
(このスタンスは、偶然か必然か3作品全てにあてはまっていたように思う)
「名は体を表す」。
岩☆ロック座の世界感は、まさに一瞬に命を懸けるロックンロールである。
ちなみに、ロックさんの書くギャグシーンは、ロックさんでないと体現できません(笑)。
【マンホールマン】
作・演出 猫道
過去に上演された作品を短編に書き直した作品。
『不条理』という言葉が、これほど似合う作品も、そうありますまい(笑)。
彼の書く作品の世界は、えらくダークでありながら、とても陽気である。
皆、全速力で狂っている。
“狂った世界の住人”ではなく、狂った人々のエネルギーが、世界を構築しているのだ。
彼らは、自分達の行動にはまったく疑問を持たず、その結果起こる不条理に苦しみ、嘆き、激怒する。
奈落に向かって、全速力で疾走していくのだ。
不条理なのだが、各人物のモチベーションやキャラクターが見事に分かれているため、
案外と入り込みやすい。この辺はセンスですね。
私の写真(AERAの表紙)がでかでかと舞台上に飾られたときは、
我ながら気持ち悪かったなあ(笑)。
ああいった小道具やセットで世界感を生み出すのも、彼の独特のセンスであろう。
佐和山君の持ってくるマンホールの蓋は、
その存在感だけで色々なイメージを与えてくれます。
最後、佐和山君と地蔵先生がクリスマスツリーにされるシーンは、かなり象徴的でしたね。
ダークで陽気。
てゆうか、あのシーン、メチャクチャ疲れました。メチャクチャ疲れました。
【えれくとろすなっく奈津美 prezennt's 轟け!☆仏Met's】
全体の総括です。
前回も書きましたが、短いながらも、とにかくエネルギーを使う舞台でした。
作品を『曲』と捉え、その上でイベントを構成していったのは、大変有効だったなと思います。
音楽のアルバムを創るように、全体を生かすために個々の作品をどう創るか、
というスタンスが暗黙のうちにできていました。
作品の並べ方は、三人でかなり悩みました。
最終的に
【NUMB】
【マンホールマン】
【年の瀬!怪談・まんじゅう怖い】
という構成になりました。
結果的には、ベストな順番でしたね。
【まんじゅう怖い】の脚本を出したとき、お二人が
「これはバラードですね。」と言ってくれたのは、自分としては意外な発見でした。
実際にやってみると、なるほど、と思います。
そして、『ママ・奈津美』として参加していただいた
DULL-COLORED POPの堀奈津美さん。
『踊り子』としてオープニングでダンスを披露してくれた
羽太祐子さんと原田えりさん。
この三人の存在は、予想以上に大きかったです。
まあ、単純に男だけだと、むさ苦しいというのもあったのですが(笑)、
会場を「えれくとろすなっく奈津美」というお店にしてしまったのは、
ママ達の存在感のたまものですね。
お店に入った瞬間、奈津美ママが出迎えてくれる訳ですが、
その時点から、ここは異空間なのですね。
が、奈津美さん本人は、あまり役に入り過ぎず、気さくに観客とお話をしたりする。
イベントの内と外に居るわけです。
で、踊り子達がダンスを始めると、徐々に観客はイベントの世界に引き込まれて行く。
そして、いよいよ本編【NUMB】が始まる・・・
自然と始まり、駆け抜けるように過ぎていく時間。
かなり観やすい構成になっていたのでは、と思うのですが、いかがでしょう?
スタッフにも恵まれました。
【秋の短編祭り!】でお世話になった、音響の長谷川ふな蔵さん。
猫道さんのイベントでは、毎回お世話になっている、照明・舞監のmasakicさん。
なんとも素敵なチラシを作ってくださった、羽尾万里子さん。
改めて、ありがとうございました!
ほぼ、当日仕込みだったり、一回目の上演から次の回までの休憩が一時間も無かったり、と
大変な現場にも関わらず、スムーズにイベントを進めてくれました。
お客様からの感想はどうだったのでしょうか?
私、まだアンケートを読んでいないのですが、
皆様に楽しんでいただけたなら、本当に嬉しいです。
御来場くださった皆様、応援してくれた皆様、ありがとうございました。
では、各作品の総括に続きます。
小櫃川 桃郎太(おびつがわ ももろうた)
【えれくとろすなっく奈津美 presents 轟け! 仏Met's】
無事に、営業終了いたしました。
御来場くださった皆様、応援くださった皆様、どうもありがとうございました!!
いやあ・・・・・・疲れました!!(笑)
ですが、とても気持ちの良い疲れです。お祭りのあと!って感じですね。
岩☆ロックさんが「これはバンドです」って言っていた通り、
今回の公演は、よりライブに近かったように思います。
とにかく、パワー! まずパワー!!
生命力(エナジー)を感じさせる熱い舞台でした。
お客さんの反応も良かったですねえ。
私のお客様は、芝居をしていない方や、
猫道さん、ロックさんとは面識が無い人も多かったのですが、
その方達にも、好評でした。
各作品の総括や、全体の感想は、また書こうと思います。
まずは、皆さん、お疲れ様でした!
楽しかったぜ!!!
小櫃川 桃郎太(おびつがわ ももろうた)
【えれくとろすなっく奈津美】の稽古も、明日で最後となる。
本当にあっという間で、なんだか実感が無い。
猫道さんが、自身のブログで「演劇引退宣言」を発表した。
今後は、ポエトリーの世界で、よりエッジの効いた表現活動をしていくようだ。
彼とは、一座の『四谷怪談』を観劇に来てもらった時からの付き合いになるので、もう4~5年が経つ。
結局、その間に舞台作品で共演したのは野外劇『藪の中』だけであった。
あれも、ほとんど一人芝居に近かったので共演という意識は薄い。
他は、彼の主宰するイベントに小櫃川一座として出演していたので、
猫道一家の作品は何度も拝見しているのだが、出演した事は無かったのである。
長い付き合いながらも、猫道・小櫃川が、それぞれの作品に出演するのは、
今回が最初で最後という事になった。
【NEKOMICHI ROCK FESTIVAL'07】で、岩☆ロックさんや、待村朋子さん達と出会い、
DULL-COLORED POPの面々に出会った。その出会いが、2008年の活動に繋がる。
ハマカワフミエさんや福原冠さん。意欲的な役者さん達とも多く出会えた。
彼のイベントに関わった事で、多くの新たな出会いに巡り合えたのは確かな事である。
一座が、活動を再開した時、
「嬉しくて、電話をしてしまいました!」と言ってくれた事を思い出す。
本当に一途な人なのだなあ。
一夜限りの共演であるが、
そこには、様々な記憶と、イベントを創ってきた者同士の信頼感がある。
それぞれの道は分かれてしまう、という事になるのだろうけど、
表現をしたい欲求と、観客を楽しませる心意気は、お互い変わらないと信じている。
今回【えれくとろすなっく奈津美】の企画を持ちかけてくれたロックさんに感謝しつつ、
日曜日、今年最後のイベントに望もうと思う。
最後の稽古だ。
小櫃川 桃郎太(おびつがわ ももろうた)
昨夜書いた『今日も、ふつう。』のラストシーンの解釈についての補足。
私は「何、キレイに終わろうとしていやがる」と考えた訳ですが、
その想いが浮かんだのは、あのシーンにある種の「美しさ」を感じてしまったからではないかと思うのです。
歪んだ関係と歪んだ状態。
そこに産まれた、歪んだ愛憎のカタチ。
歪んだゆえの美しさを感じてしまったため、理性が「いや、認めん」と否定をしていたのではないかな、と。
そんな事を、和菓子を箱詰めしながら考えました。
まあ、やっぱり認めないけど。
ふざけんな、と思うけど。
和菓子の箱を包みながら、
自分の内側の蓋を開ける。
そんな日曜日の朝。
小櫃川 桃郎太(おびつがわ ももろうた)
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